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2015.01.15 Ando et Lochard

渡し舟の上で

Sur la barque des passeurs

現存被曝状況*から、現存被曝状況へ

entre deux situations d'exposition existante

安東量子+ジャック・ロシャール Ryoko Ando et Jacques Lochard



第3回


写真: 高井潤


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編集部から




親愛なる量子さん、

 先日のお便りに心から感謝します。今こうして返信をしたためようとしているわけですが、これに先立って、いただいたお手紙を何度も読み返しました。というのも、あなたの手紙には、原発事故後の状況が持つ多くの側面が盛り込まれていて、読むたびに、数え切れないほどの思念と想い出が私の脳裡に湧いてくるのです。ただ、さまざまな活動で多忙をきわめているため、毎度、返信するのを翌日に延期していました。

 数週間がこうして過ぎました。そうするうち、福島県伊達市での第10回ICRPダイアログセミナーの折り、また私が末続を訪ねた折りに、私たちは再会しました。そんな折々に多くの主題について語り合いましたが、それらの主題のうちには、あなたが手紙の中で取り上げていたものもありました。被害を受けた地域で伝統や文化が果たす役割をめぐる問題です。けれども、私たちは問題の核心に言及したわけではありませんでした。実のところ、そうするための条件が整っていなかったのだと思います。私が言いたいのはつまり、あの折々の状況では、突っ込んだ意見交換をするために必要な落ち着いた心持ちになるのが難しかったということです。

2014.11.30 Ando et Lochard

渡し舟の上で

Sur la barque des passeurs

現存被曝状況*から、現存被曝状況へ

entre deux situations d'exposition existante

安東量子+ジャック・ロシャール Ryoko Ando et Jacques Lochard



第2回


写真: 宮井優


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編集部から




親愛なるジャック

 あなたから手紙をもらって、このお返事を書くまでのあいだに、ひとつ、渡し舟を漕いできました、と言っていいかしら。

 福島の友人たちと一緒に、ノルウェーへ行ってきたのです。ちょうど2年ぶりのことでした。

 気心の知れた古い友人たちに再会するようで、この訪問が決まってからというもの、私は、ずっと楽しみにしていました。2年ぶりの訪問だから、ということだけが理由ではありません。実を言うと、ノルウェーの友人たちは、2年前に最初に会ったときから、私たちの友人だったのです。こんな風に書いても、きっとあなたは、不思議に思わないんじゃないかしら。

 日本では、ノルウェーの一部の地域が、チェルノブイリ事故によって大きな影響を受けたことは、ほとんど知られていません。ましてや、そこに暮らす人々が、どのように放射能と向き合ってきたかなんて。