路上の人 目次
・安東量子+ジャック・ロシャール「渡し舟の上で――現存被曝状況から、現存被曝状況へ」
・梶谷懐「現代中国――現在と過去のあいだ」
・ブログ開設にあたって
2015.01.15 Ando et Lochard
渡し舟の上で
Sur la barque des passeurs現存被曝状況*から、現存被曝状況へ
entre deux situations d'exposition existante安東量子+ジャック・ロシャール Ryoko Ando et Jacques Lochard
第3回
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[編集部から]
親愛なる量子さん、
先日のお便りに心から感謝します。今こうして返信をしたためようとしているわけですが、これに先立って、いただいたお手紙を何度も読み返しました。というのも、あなたの手紙には、原発事故後の状況が持つ多くの側面が盛り込まれていて、読むたびに、数え切れないほどの思念と想い出が私の脳裡に湧いてくるのです。ただ、さまざまな活動で多忙をきわめているため、毎度、返信するのを翌日に延期していました。
数週間がこうして過ぎました。そうするうち、福島県伊達市での第10回ICRPダイアログセミナーの折り、また私が末続を訪ねた折りに、私たちは再会しました。そんな折々に多くの主題について語り合いましたが、それらの主題のうちには、あなたが手紙の中で取り上げていたものもありました。被害を受けた地域で伝統や文化が果たす役割をめぐる問題です。けれども、私たちは問題の核心に言及したわけではありませんでした。実のところ、そうするための条件が整っていなかったのだと思います。私が言いたいのはつまり、あの折々の状況では、突っ込んだ意見交換をするために必要な落ち着いた心持ちになるのが難しかったということです。
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